KCLスタッフブログ ~ブックとラック~
2016年10月24日(月)PM4:11|投稿者:KCLスタッフ

「桑名の打毬戯(だきゅうぎ)」をご存じですか?

こんにちは、「志るべ」です。
すっかり秋も深まってまいりました。
おいしいものの誘惑が多い季節ですが、スポーツの秋でもありますよね。
秋の味覚をたっぷりいただいた後には、しっかり身体を動かしたいものです。

スポーツといえば、桑名に伝統的スポーツ(競技)が残されていることをご存じでしょうか。
「打毬戯(だきゅうぎ)」といわれる競技で、江戸時代に桑名の藩校「立教館」で行われていました。
寛政の改革で有名な松平定信が白河(福島県白河市)藩主であったころ、藩校立教館に打毬を取り入れています。
『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』という江戸時代の書物(序文:文政13年)には、次のように記されています。

打毬の戯は昔江戸にて行れたりと云ふ今は奥州白川の諸士集て赤白の毬を打小門を設て打入先後相争て勝負を極む(後略)

文政6年の国替えにより、立教館とともに「打毬の戯」も白河から桑名へ移りました。
以前のブログ「渡部家の交換日記」でご紹介しました『桑名日記』には、孫の鐐之助が「だきうのまねする」(天保12年11月29日)という記述があります。
幼い鐐之助は石取祭だけでなく、打毬もまねして遊びに取り入れていたのですね。

明治以降は私塾を経て、立教小学校へと受け継がれていきました。戦争により中断を余儀なくされますが、昭和53年楽翁公150年記念大祭を機に復活しました。昭和55年からは立教地区大運動会(小学校と地区自治会により共同開催される運動会で、現在の立教大運動会)の中で行われています。
今年も10月2日、立教小学校において開催されました。

ではいったい「打毬戯」とはどんな競技なのでしょう?
『日本こどものあそび大図鑑』の「打毬」の項には次のように書かれています。

中国から伝わったポロのような球技。平安時代に宮中行事としておこなわれ、江戸時代に復興された。(中略)2組に分かれた騎馬(古代には馬に乗らない徒歩打毬もあった)の武士が、紅白の毬を毬杖(ぎっちょう)ですくい取り、毬門に投げ入れたほうが勝ち。後に子供がこれをまねして毬を打ち合う遊びができ、毬打(ぎっちょう)といった。

「桑名の打毬戯」はどうでしょうか?
復活にあたり、安全面に配慮しつつ伝統の競技を残す方法が考えられました。
現在は保存会のメンバーの指導のもと、立教小学校の5・6年生により行われています。
剣道着に襷(たすき)、はちまき、大将は陣羽織を身につけて、白い旗を掲げた「白虎隊」と赤い旗の「朱雀隊」に分かれて戦います。

白チーム「白虎隊」の旗。

白チーム「白虎隊」の旗。



赤チーム「朱雀隊」の旗。

赤チーム「朱雀隊」の旗。



競技は三種類に分かれています。
一つ目は、毬を打棒で相手ゴールに打ち込む「打毬」の競技。
大将がひとりひとりに采配を振って「打て」と命じ、それによって毬が打ち込まれます。
毬が入ると、それぞれ陣鉦(じんがね)、陣太鼓(じんだいこ)を鳴らします。

「白虎隊」のゴール。陣鉦が吊るされています。

「白虎隊」のゴール。陣鉦が吊るされています。



「朱雀隊」のゴール。陣太鼓が吊るされています。

「朱雀隊」のゴール。陣太鼓が吊るされています。



二つ目は、毬を手で相手ゴールに投げ込む「玉入れ」のような競技。
線上に並べられた毬を手でつかんで相手ゴールに投げ入れます。

一列に並んだ毬を相手ゴールに投げ入れます。

一列に並んだ毬を相手ゴールに投げ入れます。



三つ目は、腕組をして枠内から相手を押し出す「押し合い」の競技。
以前は襷(たすき)の奪い合いなどがありましたが、安全面に配慮して、腕は身体の前で組んで手や足は出さないというルールに変更されています。

これら三種類の競技の得点を合計して勝敗が決まります。
今年は赤の朱雀隊の勝利となりました。
負けた隊は降参の意を示し、副将の「兵器はずせ」の号令で、旗を降ろし、襷(たすき)やはちまきをはずし、参謀と曹長はそれらを相手方に差し出します。

旗を地面に置きます。

旗を地面に置きます。



 

襷、はちまき、大将の陣羽織などをかごへ入れます。

襷、はちまき、大将の陣羽織などをかごへ入れます。



差し出す際には決まったセリフがかわされます。

負 「そまつな品だが受け取れ」
勝 「負けたのに言葉が悪い。もう一度出直して来い」
負 「大切な武器だが、負けてやったから渡しに来た」
勝 「まだ言葉が気に入らん。どうぞお受け取りくださいと言え」
負 「どうぞ受け取ってください」
勝 「よし。受け取ってやる」

この負け惜しみの言葉には、見学の人々から笑いがこぼれていました。
それぞれの役割には決まった言い回しがあり、口上やセリフを覚えるのはたいへんなのではないでしょうか。
勝った隊は副将の「ひーのふーの」という声に合わせ、全員で「うぉーい」と声をあげながら、ひざまづいている相手方の回りを一周して退場します。その後、負けた隊も立ち上がり無言で退場します。
古式ゆかしいルール(安全面を配慮した上で)によって繰り広げられた戦いは終了しました。

遠方から、桑名の打毬戯の調査に図書館へ来られる方もいらっしゃいます。
その際に、鹿児島には「ハマ」と呼ばれる円盤を棒で打ち合う「ハマ投げ」という打毬があることをお聞きました。
打毬にもいろいろな形があるのですね。

桑名の打毬戯は地域参加の運動会で行われ、保存会を初め地域の人々の想いが受け継がれた競技といえます。
図書館では「桑名の打毬戯」を映したDVDを館内で視聴していただくことができます。
ぜひ一度、桑名独自の打毬戯をご覧ください。

<引用・参考資料>
嬉遊笑覧(序文:文政13年)』 喜多村 信節/著 緑圓書房 1958 031キ(書庫)
桑名日記 2』 渡部 平太夫政通/著, 澤下 春男/訳 ぎょうせい 1984 AL221ワ(桑名三重)
日本こどものあそび大図鑑』 笹間 良彦/著画 遊子館 2005 R384.5サ(調べる)
日本遊戯史』 酒井 欣/著 第一書房 1983 384.8サ(歴史の蔵)
三重県の祭り・行事』 三重県教育委員会 1997 AL386ミ(桑名三重)
打毬戯』 打毬戯保存会 1989 L783タ(歴史の蔵)
立教百年誌』 立教開校百年記念会 1973 L376ク(歴史の蔵)
打毬戯(DVD)』 桑名市教育委員会 (館内視聴)

<志るべ>

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